性器ヘルペス

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単純ヘルペスウィルス(herpes simplex virus:HSV)T型およびU型の性器への感染症です。
以前は、HSV1型は口、2型が生殖器への感染といわれていましたが、セックスのパターンの多様化により現代では必ずしもこの限りではありません。
また、日本人成人の約50%は、子供のときに口内炎としてこのウィルスに感染して、抗体をもっているといわれています。けしてめずらしいウィルスではないのです。
症状は、水疱や潰瘍を皮膚や粘膜に作ります。
HSVは性器に感染すると、神経を伝って移動し、腰仙髄神経節に潜伏し(いったん感染したらずっとひそんでいるのです)、疲労やストレス、体力低下などのきっかけで活動を再開し、神経を通って再度皮膚や粘膜に症状をおこします

感染が起こってから約2日から3週間が潜伏期間です。
はじめはかゆみや痛みなどを伴った水疱が多数出現(この水疱の中に大量のウィルスが存在しています)し、数日たつとそれらが潰瘍となります。左右対称性にてきることがほとんどです。性器などに症状がでる直前に40度近い発熱や頭痛を伴うこともあります。(風邪と間違えられることもしばしばです。排尿時痛が強いので尿道炎や膀胱炎と診断されることもあります。)また足の付け根のリンパ節がはれたり尿道や膣の分泌物が増えたりすることもあります。
痛みが強くて歩けないこともしばしばです。
症状は2,3週間で軽快することが多いですが、抗ウィルス剤を投与すると1、2週間で軽快することも多いです。

初めての感染に続いての発症の場合、症状は強いですが、中には感染してからある程度時間がたってはじめて発症することもあり、そのような場合は症状が軽く、治癒するまでの期間が短いことが多いです。
また、再発した場合はやはり症状は軽く、水疱や潰瘍は1個から数個程度のことが多く、1週間前後くらいで軽快することが多いです。

診断はほとんど問診・視診で可能ですが、潰瘍が違う病気のこともあり、場合によっては水疱や潰瘍の部分の細胞をとってヘルペス感染細胞の有無をみたり、血液検査(抗体)を行う場合もあります。ただし、血液検査の抗体は、発症してから最低10日くらいは待たないとでてこないので、治療にすぐ有効というわけにはいきません。細胞の検査も同様です。

治療法は、抗ヘルペスウィルス剤の投与(アシクロビル、バラシクロビル)で、軽快するまでの期間は明らかに短縮されますが、ウィルスを体のなかから完全になくすということは現在の薬ではまだ不可能です。
人によっては、年に数回以上も再発することもあり、非常に精神的にも苦痛であるため、場合によってはアシクロビル400mg 1日2回 またはバラシクロビル500mg 1日1回などを数ヶ月から1年くらい継続投与する場合もあります。アシクロビルに関しては6年間長期投与しても副作用は現時点ではほとんどないといわれています。
感染源であるパートナーに関しては、7割は無症状であるといわれており、無症状であれば特に治療の必要性はありません
コンドームの使用により、感染率はやや低下するとは考えられますが、外陰部や肛門などにも感染するため100%の予防は不可能です。

妊娠中に、このウィルスのために胎内感染することは非常にめずらしいといわれています。しかし、産道からの感染はみられます。
新生児はこのウィルスに非常に弱く、いったん新生児ヘルペス症を発症すると死亡率は20〜30%といわれています。母体が初感染の場合には約50%の新生児が感染します。再発では0〜5%といわれています。
そのため、分娩が近い時期に性器にヘルペス症がみられた場合には、場合によっては分娩時期をずらしたり帝王切開での分娩を選択するときがあります。(外陰部に症状がなくても、初感染のあと1ヶ月、再発のあと1週間はウィルスがいる可能性があります。)
またアシクロビルは現在のところ、妊娠中に投与可能な薬といわれています。